
どうも、こんにちは!ロボットしずくです。稲川幸雄さんの演劇に参加したあと「劇団ロボットカンパニー」を立ち上げ、40人の仲間と舞台をつくってきた演劇人・パフォーマーです。今は芸術鑑賞プロデュース会社「心」で、学校の芸術鑑賞会をお手伝いしています。
今回のテーマは「落語の芸術鑑賞会」です。落語は、ひとりの演者が座ったまま、扇子と手ぬぐいだけで何人もの登場人物を演じ分ける伝統芸能です。「昔の話は子どもには難しいのでは?」と思う先生もいるかもしれません。でも落語は、聞く人の想像力といっしょにつくる、とても身近な「笑い」の舞台です。国語の学習とのつながりや海外の例も参考にしながら、子どもたちと落語を楽しむコツを考えてみます。
落語とは?扇子と手ぬぐいだけで演じる「ひとり芝居」
落語は、ひとりの演者が座ったまま、話としぐさで物語を伝える日本の伝統芸能です。政府広報の英語誌『Highlighting Japan』(2018年12月号)でも、落語は「滑稽な物語を語る日本の伝統的な芸」と紹介され、その歴史は約400年にわたるとされています。同じ記事では、演者が扇子と手ぬぐいだけを使って物語や場面を見せることが、落語の魅力として語られています。
舞台セットも、衣装の早替えも、ほかの役者もいません。それなのに、話が進むうちに、聞いている人の頭の中には長屋の路地や、そば屋の屋台や、にぎやかな人々が次々に現れてきます。扇子が箸やキセルになり、手ぬぐいが財布や手紙になる。私は、落語は「いちばん少ない道具で、いちばん大きな世界をつくる舞台」だと思っています。
演劇の世界でも、何もない空間に観客の想像力で景色を立ち上げる演出があります。けれど、それをたったひとりでやってのけるのが落語です。演劇人として、私はいつも落語家の話芸に驚かされます。
国語の「話すこと・聞くこと」とつながる落語
落語は、学校の国語の学習ともつながっています。小学校学習指導要領(平成29年告示)の国語では、第3学年及び第4学年の「話すこと・聞くこと」に、「話の中心や話す場面を意識して,言葉の抑揚や強弱,間の取り方などを工夫すること」が示されています。
この「抑揚」「強弱」「間の取り方」は、まさに落語家が毎回の高座で磨いている技そのものです。同じせりふでも、声を少し落とすだけで、ひそひそ話に聞こえる。ひと呼吸おくだけで、次のひと言がぐっと面白くなる。子どもたちは、教科書で学ぶ「話し方の工夫」を、プロの話芸として目の前で体験することができます。
また、古典の学習との関係でいえば、狂言と同じく「昔の人のくらしや笑い」にふれる入り口にもなります。狂言の鑑賞のポイントは狂言の芸術鑑賞会の記事で紹介しているので、あわせて読んでみてください。同じ「笑い」の伝統芸能でも、大勢で演じる狂言と、ひとりで演じ分ける落語では、楽しみ方が少しずつ違います。
落語の見どころ|声・しぐさ・「間」
落語を初めて聞く子どもたちに、どこに注目してほしいか。舞台をつくる側の目線から、私は次の3つをおすすめしています。
- 声の演じ分け:ひとりの演者が、子どもも、おじいさんも、商人も演じます。声の高さや話す速さ、口調の違いで、今だれがしゃべっているのかが分かる。この切り替えの見事さは、生で聞くといっそう伝わってきます。
- 扇子と手ぬぐいのしぐさ:同じ扇子が、場面によってまったく違う道具に見えてきます。「今、扇子が何に変わった?」と考えながら見ると、しぐさの細やかさに気づけます。
- 「間」と客席の笑い:落語の笑いは、話の内容だけでなく、ひと呼吸の「間」から生まれます。そして、その間は客席の反応によっても変わります。笑い声が、次のひと言を引き出すのです。
だからこそ、落語の鑑賞会では「おもしろいと思ったら、遠慮なく笑っていいんだよ」と事前に伝えておいてください。伝統芸能だからといって静まり返る必要はありません。拍手や笑いのタイミングについては芸術鑑賞会の鑑賞マナーの記事でもくわしく紹介しています。
寄席の文化と、海外に広がる英語落語
落語が日常的に演じられている場所に「寄席」があります。文化庁の広報誌「ぶんかる」の記事「こころ安らぐ“寄席”という空間」では、寄席を、落語をはじめとしたさまざまな演芸が行われる場であり、常設の演芸場でほぼ連日行われる「定席(じょうせき)」とも呼ばれる演芸公演として紹介しています。落語は、劇場の特別な公演だけでなく、毎日の娯楽として受け継がれてきた芸能なのです。
そして今、落語は海外にも届けられています。アメリカのケネディ・センターのウェブサイトでは、大阪の落語家・桂かい枝さんが1994年からプロの落語家として活動し、1997年から英語で落語を演じていること、アメリカでのツアーでは学校での教育ワークショップも行っていることが紹介されています。また、『Highlighting Japan』では、カナダ・トロント出身の桂サンシャインさんが、およそ100年ぶりの外国出身の落語家として紹介されています。
言葉や文化が違っても、ひとりの語りと扇子一本で人を笑わせることができる。海外の学校で落語が紹介されていることは、日本の子どもたちにとっても「自分たちの国の芸能は、世界に通じる」と気づくきっかけになると私は思います。海外の芸術教育については海外の芸術鑑賞教育の記事もどうぞ。
学年別の楽しみ方と、事前・事後の工夫
同じ落語でも、学年によって楽しめるポイントは少しずつ違います。演目を選ぶときや、事前の声かけの目安として、私なりにまとめてみました。
- 小学校低学年:話の筋がすべて分からなくても大丈夫。声の変化や大きなしぐさ、登場人物のあわてぶりなど、耳と目で分かる笑いを楽しみましょう。
- 小学校中学年・高学年:国語で「抑揚・強弱・間」を学ぶ時期です。「どこで声を大きくした?」「どこでひと呼吸おいた?」と、話し方の工夫に目を向けてみましょう。
- 中学生・高校生:ひとりで何役も演じ分ける技術や、昔のくらしの中の人間らしさが、なぜ今も笑いになるのかに注目すると、鑑賞が一段深くなります。
事後学習では、心に残った場面を友だちに「語って」みるのがおすすめです。うまく話す必要はありません。「落語家さんはここで間をとっていたね」と思い出しながら話すだけで、聞いたことが自分の言葉になっていきます。体育館で行う場合は、後ろの席からも演者の表情としぐさが見えるよう、高座の高さや客席の並べ方を事前に確認しておくと安心です(体育館で芸術鑑賞会をするときの準備も参考にしてください)。
「心」の演目の中では、感動する落語と技が、「300万人が涙したやりとり」をうたう、笑いと感動の落語の舞台です。公演の内容や時間は、学年や会場に合わせてご相談いただけます。同じ伝統芸能として、狂言方大蔵流 大藏教義とあわせて検討するのもひとつの方法です。
芸術鑑賞プロデュース会社「心」では、落語をはじめとする伝統芸能の舞台を、学年や国語の学習のねらいに合わせてご提案しています。「話し方の学習とつなげたい」「全校で笑える伝統芸能を探している」など、お気軽にご相談ください。
- 内閣府政府広報室『Highlighting Japan』2018年12月号「The Philosophy of a Canadian Rakugo Storyteller」
- 文部科学省(StuDX Style)掲載資料「小学校学習指導要領(平成29年告示)」「同 解説 国語編」より(PDF)
- 文化庁広報誌ぶんかる「こころ安らぐ“寄席”という空間」
- The Kennedy Center「Kaishi Katsura」
※制度や取り組みの内容は、記事作成時点で公開されている情報をもとにしています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。





