
どうも、こんにちは!ロボットしずくです。稲川幸雄さんの演劇に参加したあと「劇団ロボットカンパニー」を立ち上げ、40人の仲間と舞台をつくってきた演劇人・パフォーマーです。今は芸術鑑賞プロデュース会社「心」で、学校の芸術鑑賞会をお手伝いしています。
今回のテーマは「狂言の芸術鑑賞会」です。「伝統芸能」と聞くと、子どもたちには難しそうに感じられるかもしれません。でも狂言は、せりふとしぐさで笑わせる、昔の人のための「喜劇」です。小学校の国語の古典の学習ともつながりの深い狂言を、どう見ればもっと楽しめるのか。舞台をつくる側の目線から考えてみます。
狂言とは?能とあわせて「能楽」と呼ばれる伝統芸能
まず、狂言がどんな芸能なのかを確認しておきましょう。京都市観光協会の京都観光Navi「能楽ってなんだろう?」では、能と狂言を合わせて「能楽」と呼び、どちらも平安時代中期に成立した「猿楽」を源流としていると説明されています。
同じ能楽でも、能と狂言は性格がずいぶん違います。能が謡と舞で構成され、荘重で悲しい内容が多いのに対して、狂言はせりふとしぐさを中心とした対話劇で、滑稽で喜劇的な内容が中心です。登場するのは貴族や歴史上の人物ではなく、当時の一般の人々。主人と家来の太郎冠者のやりとりなど、身近な人たちの失敗やごまかしが笑いになります。
流派は、室町時代後期に大蔵流・和泉流・鷺流が成立し、現在は大蔵流と和泉流の2つが「家」ごとに活動しているとされています。また、外務省の資料によると、能楽は2001年にユネスコの「人類の口承及び無形遺産に関する傑作」に宣言されました(その後、無形文化遺産の代表一覧表に統合されています)。
伝統芸能全体の楽しみ方については、伝統芸能の芸術鑑賞会の記事でも紹介しています。今回はその中から、狂言にしぼって考えていきます。
国語の「我が国の言語文化」とのつながり
狂言は、学校の学習ともつながりがあります。小学校学習指導要領(平成29年告示)の国語では、第5学年及び第6学年の「我が国の言語文化」に、「親しみやすい古文や漢文,近代以降の文語調の文章を音読するなどして,言葉の響きやリズムに親しむこと」「古典について解説した文章を読んだり作品の内容の大体を知ったりすることを通して,昔の人のものの見方や感じ方を知ること」が示されています。
たとえば、岩手県の教育関係のウェブサイトに掲載されている令和4年の小学校6年生の国語科学習指導案では、光村図書の教科書の「古典芸能の世界-演じて伝える」「狂言 柿山伏」が教材として扱われています。この指導案では、修行を終えたばかりの山伏が空腹のあまり柿を盗んで食べ、柿主に見つかってあわててごまかそうとするやりとりを、擬声語や擬態語、言い回し、リズム、反復を味わえる教材として扱い、音読の工夫をしてそのおもしろさを1年生に紹介する単元が組まれていました。
教科書で読んだ言葉が、本物の狂言師の声と体で目の前に立ち上がる。私は、ここに狂言の芸術鑑賞会ならではの価値があると考えています。「読む古典」が「見て、聞いて、笑う古典」に変わる瞬間です。
狂言の見どころ|せりふ・しぐさ・想像力
狂言を初めて見る子どもたちに、どこを見てほしいか。演劇人として、私は次の3つをおすすめしています。
- 声とせりふのリズム:狂言のせりふは、当時の日常の話し言葉がもとになっています。昔の言葉でも、声の大きさや間、くり返しのリズムで、意外なほど意味が伝わってきます。独特の言い回しも、耳で聞くと楽しいものです。
- しぐさと型:歩く、戸を開ける、何かを食べる。狂言の舞台では、こうした動作もしぐさで見せていきます。道具がなくても、しぐさだけで「今、何をしているか」が分かる。これは、演劇の基本そのものです。
- 何もない舞台と想像力:京都観光Naviでも、狂言は2、3人で成り立ち、大がかりな舞台や囃子がなくても上演できると紹介されています。セットがほとんどないぶん、山も、柿の木も、川も、見る人の頭の中に生まれます。
私は、狂言は「見る人の想像力でいっしょにつくる舞台」だと思っています。役者が「ここは山道」と言えば、そこはもう山道。子どもたちが自分の頭の中に景色を描けたとき、舞台は一気におもしろくなります。
なお、国立能楽堂では、初心者にもわかりやすい内容の狂言と能を能楽師の解説付きで上演する「能楽鑑賞教室」が開かれてきたことが、文化庁の広報誌で紹介されています。劇場でも、解説を入り口に古典の舞台に親しんでもらう工夫がされているのです。
狂言の鑑賞会を深める事前・事後の工夫
狂言は、少しだけ準備をしておくと楽しさがぐっと増す芸能です。ただし、話の筋を全部説明してしまうと笑いの驚きが減ってしまうので、「入り口」だけ用意するのがコツです。
- 事前:「狂言は昔の喜劇」「登場人物は主人や家来など、ふつうの人たち」と伝えておくだけで、見る構えが変わります。教科書に「柿山伏」がある学年なら、一場面を声に出して読んでおくのもおすすめです。
- 当日:「おもしろいと思ったら、笑っていいんだよ」と伝えておきましょう。伝統芸能だからと静まり返る必要はありません。喜劇は、客席の笑いがあってこそ完成します。
- 事後:心に残ったせりふやしぐさを、みんなでまねしてみる。「あのとき、どうしてごまかそうとしたんだろう?」と登場人物の気持ちを話し合う。昔の人の失敗に、今の自分たちとの共通点が見つかるかもしれません。
事前学習の考え方は芸術鑑賞会の事前学習の進め方で、どこまで話すかの加減も含めてくわしく紹介しています。
学年別の楽しみ方と、体育館で見るときのポイント
同じ狂言でも、学年によって楽しめるポイントは少しずつ違います。演目を選ぶときや事前の声かけの目安として、私なりにまとめてみました。
- 小学校低学年:言葉の意味がすべて分からなくても大丈夫。大きな声、おおげさなしぐさ、人物のあわてぶりなど、目と耳で分かる笑いを楽しみましょう。
- 小学校高学年:国語の古典の学習とつなげやすい時期です。言葉の響きやリズム、昔の人のものの見方や感じ方に目を向けてみましょう。
- 中学生・高校生:型や発声といった「技」、そして室町時代から演じ継がれてきた笑いがなぜ今も通じるのかに注目すると、鑑賞が一段深くなります。
体育館で鑑賞する場合は、後ろの席からも役者の表情やしぐさが見えるよう、客席の並べ方や舞台の位置を事前に確認しておくと安心です。会場準備の確認点は、体育館で芸術鑑賞会をするときの準備の記事にまとめています。
「心」の演目の中では、狂言方大蔵流 大藏教義が、大蔵流の狂言師による伝統芸能の舞台です。体育館・ホールでの公演に対応しています。また、同じ「笑い」の伝統芸能として感動する落語と技を組み合わせて考えるのも一つの方法です。
芸術鑑賞プロデュース会社「心」では、演劇・音楽・伝統芸能・パフォーマンス・講演会まで20を超える演目の中から、狂言をはじめとする伝統芸能の舞台を、学年や国語・音楽の学習のねらいに合わせてご提案しています。「古典の学習とつなげたい」「全校で笑える伝統芸能を探している」など、お気軽にご相談ください。
- 京都観光Navi(京都市観光協会)「その1 能楽ってなんだろう?」
- 外務省「無形文化遺産の保護に関する条約 概要」
- 文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」(小学校学習指導要領 国語)
- 岩手県の教育関係ウェブサイト掲載「第6学年 国語科学習指導案(狂言 柿山伏)」
- 文化庁広報誌ぶんかる(国立能楽堂「能楽鑑賞教室」の紹介)
※制度や取り組みの内容は、記事作成時点で公開されている情報をもとにしています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。







