
どうも、こんにちは!ロボットしずくです。稲川幸雄さんの演劇に参加したあと「劇団ロボットカンパニー」を立ち上げ、40人の仲間と舞台をつくってきた演劇人・パフォーマーです。今は芸術鑑賞プロデュース会社「心」で、学校の芸術鑑賞会をお手伝いしています。
芸術鑑賞会の前に、子どもたちへ「鑑賞マナー」をどう伝えるか、迷う先生も多いのではないでしょうか。「静かに見なさい」だけでは、笑っていい場面まで固まってしまうこともあります。今回は、舞台に立つ側の目線から、拍手・笑い・集中をどう伝えればいいのかを考えてみます。
鑑賞マナーは「出演者と観客でつくる空気」
芸術鑑賞会の前に、先生が「静かに見ましょう」「しゃべらないようにしましょう」と注意を伝える場面はよくあると思います。もちろん大切なことです。でも、舞台に立つ側の私から見ると、鑑賞マナーは「禁止事項のリスト」だけではありません。
舞台は、出演者だけではできあがりません。客席の空気が、そのまま舞台に返ってきます。みんなが前のめりになっている客席では、役者のせりふにも自然と力が入ります。反対に、ざわざわした客席では、一番大事な静かな場面が届きにくくなってしまいます。
だから私は、鑑賞マナーを「出演者と観客がいっしょに、いい時間をつくるための約束」として子どもたちに伝えてほしいと思っています。「怒られないため」ではなく「自分もいい舞台を見るため」と分かると、子どもたちの姿勢は変わっていきます。
子どもに伝えたい基本の鑑賞マナー
まずは、ジャンルにかかわらず伝えておきたい基本です。数が多すぎると覚えきれないので、学年に合わせてしぼってください。
- 始まる前にトイレをすませる:上演中に席を立つと、本人も周りも集中が切れてしまいます。
- 上演中のおしゃべりはがまん:感じたことは、終わってから友だちと話そう、と伝えておきます。
- 撮影・録音はしない:中学生・高校生には、スマートフォンの扱いもあわせて確認しておきましょう。
- 拍手で気持ちを伝える:始まりと終わり、心が動いたときの拍手は、出演者への一番のお返事です。
- 具合が悪くなったら、がまんしすぎない:近くの先生に知らせる方法を、あらかじめ決めておくと安心です。
体育館で行う場合は、座る場所や暗転のときの過ごし方も、事前に伝えておくとスムーズです。会場づくりの準備については体育館で芸術鑑賞会をするときの準備でまとめています。
拍手と笑いはマナー違反ではない|ジャンルで変わる反応
「静かに見る」を強く伝えすぎると、子どもたちが笑いたい場面でも笑いをこらえてしまうことがあります。でも、舞台によっては、客席の笑いや拍手そのものが作品の一部です。
- 狂言・落語:笑いを大切にしてきた芸能です。おかしいと思ったら、笑っていいんです。笑い声は「ちゃんと伝わっているよ」という合図になります。
- サーカス・パフォーマンス・和太鼓:技が決まった瞬間の拍手や歓声は、出演者の力になります。
- 演劇・ミュージカル:笑う場面もあれば、息をのむような静かな場面もあります。物語の流れを感じながら、反応を自分で選ぶ経験になります。
- オーケストラなどのクラシック音楽:曲の途中では拍手をしないのが一般的です。迷ったら、周りや演奏者の様子を見てから拍手すれば大丈夫です。
つまり、鑑賞マナーは「いつも同じ」ではなく、ジャンルによって楽しみ方が少しずつ違うということです。事前学習で「今日の舞台は、笑っていいタイプかな?」と話し合っておくのも楽しいですよ。伝統芸能の楽しみ方は伝統芸能の芸術鑑賞会でも紹介しています。
「静かに」が苦手な子もいる|リラックス・パフォーマンスという考え方
一方で、長い時間じっと座っていることや、暗い客席、大きな音が苦手な子もいます。「静かにしなければいけない」というルールそのものが、不安の原因になることもあるでしょう。
劇場の世界には、そうした人も舞台を楽しめるようにする「リラックス・パフォーマンス」という考え方があります。たとえばアイルランドのアビー・シアターは、自閉症や知的・神経・感覚の特性がある人にも開かれた上演として、客席の照明を完全には消さない、音や光の演出を前もって知らせる、必要なときは席を立ったり客席を出たりしてよい、といった形を紹介しています。
日本でも、岡山県の岡山芸術創造劇場ハレノワで、2026年8月に「子どもと大人のためのリラックスパフォーマンス『やさしいカクメイ』」が上演されました。岡山市の案内によると、「劇場は静かにしなければならない」といったルールに不安を感じる人のために生まれた作品で、上演中の出入りは自由、強い光や大きな音は使わず、声を出しても大丈夫とされています。
学校の芸術鑑賞会でも、この考え方から学べることがあります。出入りしやすい席を用意する、大きな音や暗転がある場面を前もって伝えておく、つらくなったら休める場所を決めておく。特別支援学校・特別支援学級の子どもたちはもちろん、どの子にとっても「安心して見られる」ことは、集中して見るための土台になります。
学年に合わせた鑑賞マナーの伝え方
同じマナーでも、伝え方は学年によって変えたほうが届きます。
- 小学校低学年:約束は3つくらいにしぼり、「おくちはチャック、おててはパチパチ」のように、からだの動きとセットで覚えます。
- 小学校高学年:「どうしておしゃべりしないほうがいいの?」と理由を考えさせます。自分で考えたルールは守りやすくなります。
- 中学生:「観客も舞台の一部」という視点を伝えます。客席の反応が出演者に届くことを知ると、拍手や集中の質が変わります。
- 高校生:劇場や演奏会でも通じる「大人の観客としてのふるまい」として伝えます。スマートフォンの電源やマナーモードの確認も、自分たちで呼びかけ合えるといいですね。
そして終わったあとは、「拍手、届いていたと思う?」と振り返ってみてください。マナーを守ったことで、いい時間になった。その実感が、次の鑑賞につながっていきます。
拍手や笑いが自然に生まれる舞台は、鑑賞マナーを学ぶきっかけにもなります。たとえば狂言方大蔵流 大藏教義の狂言や、感動する落語と技は、笑いと拍手で客席と舞台がつながる伝統芸能です。テクノロジーサーカス集団のように、映像とテクノロジーで魅せるパフォーマンスもあります。
芸術鑑賞プロデュース会社「心」では、演劇・音楽・伝統芸能・パフォーマンス・講演会まで20を超える演目の中から、学年や会場、子どもたちの様子に合わせた演目をご提案しています。「笑って楽しめる舞台を」「じっくり見る舞台を」など、鑑賞会のねらいに合わせた演目選びについて、お気軽にご相談ください。
- Abbey Theatre「Abbey Theatre Presents Its First Ever Relaxed Performances」
- 岡山市「ハレの輪こどもフェスティバル2026 特別公演 子どもと大人のためのリラックスパフォーマンス『やさしいカクメイ』」
※記事内の公演・取り組みの内容は、記事作成時点で公開されている情報をもとにしています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。







