
どうも、こんにちは!ロボットしずくです。稲川幸雄さんの演劇に参加したあと「劇団ロボットカンパニー」を立ち上げ、40人の仲間と舞台をつくってきた演劇人・パフォーマーです。今は芸術鑑賞プロデュース会社「心」で、学校の芸術鑑賞会をお手伝いしています。
今回のテーマは、サーカスやパフォーマンスの芸術鑑賞会です。空中に浮かぶ道具、息をのむバランス技、暗闇に光る不思議な世界。サーカス・パフォーマンスは、セリフがなくても体育館じゅうを一つにできるジャンルです。一方で「ただ『すごい』で終わってしまわないか」と気にされる先生もいるかもしれません。フィンランドでサーカスが芸術教育の一分野として扱われている例も紹介しながら、パフォーマーの目線で、楽しみ方と準備のポイントを考えてみます。
サーカス・パフォーマンスの鑑賞会は「言葉の壁」がない
演劇や講演会は、言葉の意味が分かるほど深く楽しめます。それに対してサーカスやパフォーマンスは、目の前で起きていることそのものが伝わる舞台です。投げた道具が宙を舞う、人が人の上に立つ、暗闇の中で光だけが動く。小学1年生でも高校3年生でも、同じ瞬間に「おおっ」と声が出ます。
だからこそ、全校で一緒に見る芸術鑑賞会と相性がいいジャンルだと私は考えています。学年によって受け取るものは違っても、同じ場面で一緒に驚き、一緒に拍手をする。その体験自体が、学校行事としての大きな意味になります。
学校行事の中での芸術鑑賞会の位置づけも確認しておきましょう。平成20年改訂の小学校学習指導要領では、特別活動の学校行事のうち「文化的行事」の内容として、「平素の学習活動の成果を発表し,その向上の意欲を一層高めたり,文化や芸術に親しんだりするような活動を行うこと」が示されています。サーカスやパフォーマンスは、まさに「芸術に親しむ」入り口として選びやすい演目です。
海外の例|フィンランドではサーカスも芸術教育のひとつ
日本ではサーカスを「娯楽」と考える人も多いかもしれません。でも海外に目を向けると、サーカスを芸術教育の一分野として扱っている国があります。その一つがフィンランドです。
- 芸術の基礎教育にサーカスが入っている:フィンランド教育文化省の説明によると、同国の「芸術の基礎教育(Basic education in the arts)」は、主に子どもや若者を対象に、学校の授業とは別の課外の活動として行われるものです。中核カリキュラムが定められた分野として、音楽、文芸、ダンス、演劇などと並んで「サーカス芸術」が挙げられています。
- ユースサーカスの広がり:フィンランドのサーカス情報サイト「Sirkusinfo」の紹介では、最初のユースサーカスが1972年に設立され、フィンランド・ユースサーカス協会は1991年に設立されました。2016年時点で協会には45の加盟サーカスがあり、約9,000人がサーカスを趣味として練習していたとされています。
サーカスが音楽や演劇と同じように「学ぶ価値のある芸術」として位置づけられている点は、日本の芸術鑑賞会で演目を選ぶときにも参考になる考え方だと思います。海外の取り組みについては、海外の芸術鑑賞教育の記事でも紹介しています。
「すごい!」の先へ|技の裏側にある練習と信頼
サーカス・パフォーマンスの鑑賞会でよく聞く心配が、「すごかった」だけで終わってしまうことです。でも私は、「すごい」は大切な入り口だと思っています。大事なのは、そこから一歩だけ先に目を向けてもらうことです。
パフォーマーの立場から言うと、舞台で見せる数分の技の裏側には、数えきれない練習の時間があります。そして、二人以上で組む技は、相手を信じていなければ成り立ちません。投げる人と受ける人、支える人と上に乗る人。「この技を成功させるために、出演者どうしがどんなふうに声や目線で合図しているか」に注目すると、技が「チームの仕事」に見えてきます。
また、最近は光や映像、機械などのテクノロジーを組み合わせたパフォーマンスもあります。「この光はどうやって動いているんだろう?」という疑問は、理科や情報の学びにもつながる好奇心です。
学年別|サーカス・パフォーマンスの楽しみ方
同じ舞台でも、学年によって「見るポイント」を変えて渡すと、受け取り方がぐっと深まります。
- 小学校低学年:「いちばんびっくりした技を一つ覚えて帰ろう」と、探すものを一つだけ伝えます。驚いて声が出るのは自然な反応なので、思い切り楽しませてあげてください。
- 小学校高学年:「失敗しないために、出演者はどんな工夫をしているかな?」と問いかけると、道具の持ち方や呼吸の合わせ方に目が向きます。
- 中学生:仲間との信頼やチームワークに注目させてみましょう。部活動や学校行事での自分たちの経験と重ねて見る生徒もいるはずです。
- 高校生:技だけでなく、音楽・照明・衣装を含めた「作品としての構成」に目を向けると、パフォーマンスを総合芸術として味わえます。進路として舞台やエンターテインメントの仕事に興味を持つきっかけにもなります。
演目によって対象学年の目安があります。たとえばブラックライトショー BLACK CIRCUSは、暗闇を生かして道具や人が空中に浮かぶように見えるパフォーマンスで、暗闇で生きる男の物語を描く80分の作品です。演目ページでは対象が中学校・高校とされています。学年に合うかどうかは、ご相談の際に確かめてください。
体育館で楽しむための準備と安全
サーカス・パフォーマンスは動きが大きく、道具を高く投げたり、光の演出を使ったりする演目もあります。体育館で行う場合は、事前の打ち合わせで次の点を確認しておくと安心です。
- 天井の高さと舞台の広さ:投げ技や高さのある技は、天井や照明器具との距離が大切です。演技スペースをどこに取るかを出演者側と相談しましょう。
- 暗さの確保:光を使う演目では、暗幕でどこまで暗くできるかが見え方を大きく左右します。昼間の公演なら、窓や扉のすき間も確認しておくとよいでしょう。
- 客席との距離:前列と演技スペースの間に十分な距離をとることで、安全に、しかも全体が見やすくなります。
暗幕や電源、客席の並べ方などの詳しいチェック項目は、体育館で芸術鑑賞会をするときの準備にまとめています。
拍手と歓声で、客席も舞台の一部になる
サーカス・パフォーマンスでは、技が決まった瞬間の拍手や歓声が、出演者にとって何よりの力になります。演劇やクラシックのように「最後まで静かに」と決めつける必要はありません。技が決まったら拍手、驚いたら声を出していいと事前に伝えておくと、子どもたちは安心して舞台に参加できます。
ただし、出演者が集中して技に入る直前の「静けさ」も、舞台の一部です。「準備の時間は息をひそめて見守り、決まったら大きな拍手」。このメリハリを伝えておくと、客席全体で舞台をつくる体験になります。拍手や声の出し方については、芸術鑑賞会の鑑賞マナーの記事もあわせて読んでみてください。
芸術鑑賞プロデュース会社「心」では、テクノロジーサーカス集団をはじめとするサーカス・パフォーマンスから、演劇・音楽・伝統芸能・講演会まで20を超える演目の中から、学年や会場、行事のねらいに合った舞台をご提案しています。「全校で一緒に盛り上がれる演目を探している」「体育館でサーカスができるか知りたい」など、お気軽にご相談ください。
- Ministry of Education and Culture, Finland「Basic education in the arts」
- Sirkusinfo「Education and Training」
- 文部科学省「小学校学習指導要領 第6章 特別活動」(平成20年改訂)
※制度や取り組みの内容は、記事作成時点で公開されている情報をもとにしています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。







