
どうも、こんにちは!ロボットしずくです。稲川幸雄さんの演劇に参加したあと「劇団ロボットカンパニー」を立ち上げ、40人の仲間と舞台をつくってきた演劇人・パフォーマーです。今は芸術鑑賞プロデュース会社「心」で、学校の芸術鑑賞会をお手伝いしています。
芸術鑑賞会というと演劇や音楽を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、「講演会」も学校で本物の大人に出会える大切な時間です。ただ、話を聞く時間は、どうしても「静かに座っているだけ」になりがち。今回は、舞台をつくる側の目線から、講演会を「聞くだけ」で終わらせないための準備と、音楽やアートと組み合わせる工夫を考えてみます。
講演会も芸術鑑賞会のひとつ|「話」が舞台になる時間
学校の体育館やホールで行われる講演会は、ひとりの大人が、自分の人生や仕事、大切にしてきたことを、子どもたちの前で語る時間です。演劇のような大きなセットや照明はなくても、話し手の声、間、表情、そして本人の経験そのものが、聞く人の心を動かします。
私は演劇人として、講演会もまたひとつの「舞台」だと考えています。客席に座る子どもたちが、話し手の言葉に笑ったり、息をのんだり、ふと自分のことを考えたりする。その反応がまた話し手に返ってきて、その場かぎりの時間が生まれます。録画ではなく、同じ空間で本人の話を聞くことの意味は、そこにあると思います。
一方で、講演会は「話を聞く」ことが中心なので、子どもたちにとっては受け身になりやすい行事でもあります。だからこそ、見る前・聞いたあとの準備が、ほかのジャンル以上に大切になります。
「聞くだけ」で終わらせない、事前の問いかけ
講演会の前に、私がおすすめしたいのは、子どもたちにひとつだけ「問い」を持たせておくことです。たとえば、こんな問いです。
- この人は、どんなきっかけで今の仕事を選んだんだろう?
- うまくいかなかったとき、どうやって乗りこえたんだろう?
- もし質問できるとしたら、何を聞いてみたい?
問いを持って聞くと、話の中から「答え」を探そうとするので、自然と集中が続きます。話し手のプロフィールを事前に少しだけ紹介しておくのも効果的です。ただし、話の中身まで先に伝えてしまうと、当日の驚きが減ってしまいます。どこまで話しておくかの加減は、芸術鑑賞会の事前学習の進め方でも紹介しています。
音楽・アート・パフォーマンスと組み合わせる講演会
話だけの時間が長くなると、低学年の子どもや、聞くことが苦手な子どもには負担になることもあります。そこで考えたいのが、講演と、音楽・アート・パフォーマンスを組み合わせる形です。目で見て、耳で聞いて、心が動いたあとに語られる言葉は、まっすぐ届きやすくなります。
たとえば、芸術鑑賞プロデュース会社「心」の演目には、こんな組み合わせがあります。
- ギネス世界記録保持者が教える夢の掴み方:体育のバスケットボールで世界ギネス記録を達成したパフォーマーの講演会・授業。高校で試合に出られず挫折したこと、銀行員として働いたあとにパフォーマーの道を選んだことなど、本人の歩みが語られます。
- ロボットのぞみ:心理カウンセラーによる弾き語りと講演会。ばあちゃん・病気・家族・命の大切さをテーマにした歌と話を届けます。
- サンドアートショー・講演会:砂で描く物語の実演に、講演会「夢とは」や、バイオリンの生演奏とのコラボ、朗読とサンドアートを組み合わせたプログラムです。
どれも「技」や「音楽」で心をひらいてから、話し手自身の言葉につなげていく構成です。夢や働くことをテーマにした講演は、進路の学びとも相性がよく、キャリア教育と芸術鑑賞会の記事でも、事前・事後の工夫を紹介しています。
学年別|講演会を届けるときの工夫
同じ講演会でも、学年によって届き方は変わります。学校で相談するときの目安として、こんな視点を持っておくとよいと思います。
- 小学校低学年:話だけの時間は短めにして、実演や音楽、体験の時間を多めに。「すごい!」という驚きが入口になります。
- 小学校高学年:「失敗したとき、どうしたか」という話に、自分の経験を重ねられるようになる時期です。質問コーナーがあると、ぐっと身近に感じられます。
- 中学生:将来への不安や、友だち・家族との関係に悩む時期。話し手が自分の弱さや迷いも語ってくれる講演は、「自分だけじゃない」と感じるきっかけになります。
- 高校生:進路を選ぶ時期だからこそ、まっすぐな成功談よりも、迷いながら道を選んできた話が響くことがあります。講演のあとに、自分の進路について書く時間をとるのもひとつの方法です。
家族や命、病気など、心にふれるテーマの講演では、子どもによっては自分の体験と重なり、つらく感じることもあります。事前に担任の先生や養護の先生とテーマを共有し、必要な子どもには声をかけられるようにしておくと安心です。
聞いたあとが大切|振り返りと、海外の「話しに来る大人」
小学校・中学校の学習指導要領(平成29年告示)の特別活動では、学校行事について「体験活動を通して気付いたことなどを振り返り,まとめたり,発表し合ったりするなどの事後の活動を充実すること」とされています。講演会も、聞いて終わりではなく、振り返るところまでがひとつながりの活動です。
たとえば、「いちばん心に残った言葉」をひとつだけ書く、事前に持っていた問いの答えを書く、話し手への手紙を書く、といった方法があります。「心に残った言葉」は、人によって選ぶ場所が違うので、クラスで読み合うと、同じ話から生まれた考えの広がりに気づけます。
海外にも、学校に大人が「話しに来る」取り組みがあります。イギリスでは2012年7月、当時のニック・クレッグ副首相が「Inspiring the Future」という取り組みを発表しました。さまざまな仕事をしている大人がボランティアとして公立学校を訪れ、自分のキャリアについて話すもので、30人ほどの生徒と約1時間のワークショップを行うと紹介されています。国は違っても、本物の大人の話を、子どもたちが目の前で聞くことを大切にしている点は共通しています。
芸術鑑賞プロデュース会社「心」では、夢や努力、家族や命をテーマにした講演会を、パフォーマンスや音楽、サンドアートと組み合わせた形でもご提案しています。学年や学習のテーマ、講演会で子どもたちに持ち帰ってほしいことをお聞かせいただければ、それに合う演目と構成を一緒に考えます。どうぞお気軽にご相談ください。
- 文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」(小学校・中学校学習指導要領 特別活動)
- GOV.UK「Deputy Prime Minister launches Inspiring the Future」(2012年7月2日)
※制度や事業の内容は、記事作成時点で公開されている情報をもとにしています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。






