
どうも、こんにちは!ロボットしずくです。稲川幸雄さんの演劇に参加したあと「劇団ロボットカンパニー」を立ち上げ、40人の仲間と舞台をつくってきた演劇人・パフォーマーです。今は芸術鑑賞プロデュース会社「心」で、学校の芸術鑑賞会をお手伝いしています。
今回のテーマは、特別支援学校の芸術鑑賞会です。「大きな音が苦手な子もいるけれど大丈夫?」「最後まで座っていられるかな?」と、演目選びや当日の準備に悩む先生もいらっしゃると思います。国の法律や文化庁の取り組みを手がかりに、障害のある子どもたちも主体的に楽しめる芸術鑑賞会のつくり方を、舞台をつくる側の目線から考えてみます。
特別支援学校の芸術鑑賞会で、いちばん大切にしたいこと
芸術鑑賞会というと、体育館やホールに全員が並んで座り、静かに舞台を見る姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも、特別支援学校では、子どもたち一人ひとりの感じ方や過ごし方が本当にさまざまです。音に敏感な子、体を揺らして楽しむ子、声で気持ちを伝える子もいます。
私は、特別支援学校の芸術鑑賞会でいちばん大切なのは、「みんなを同じ見方にそろえること」ではなく、「一人ひとりが自分のやり方で舞台とつながれること」だと考えています。舞台の上の音や光、役者の動きを、それぞれの子が自分なりに受け取り、反応する。その反応こそが、鑑賞の中身そのものです。
法律と国の事業にある「障害の有無にかかわらず」
障害のある人が文化芸術に親しむことについては、法律もあります。平成30年(2018年)6月13日に公布・施行された「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」です。文化庁の通知では、この法律の基本理念として、国民が障害の有無にかかわらず文化芸術を鑑賞し、参加し、創造することができるよう、障害者による文化芸術活動を幅広く促進することが示されています。
また、鑑賞の機会を広げるための施策として、作品などについての音声・文字・手話などによる説明の提供の促進や、文化芸術施設を円滑に利用できるようにするための整備、障害の特性に応じた鑑賞しやすい環境の整備などが挙げられています。
この法律にもとづく「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」は、現在は第2期(令和5年度〜令和9年度)が定められています。第1期の計画では、幼少期から生涯にわたって多様な文化芸術活動に参加できることが重要だとされています。学校の芸術鑑賞会は、その大切な入り口のひとつだと私は思います。
文化庁の「ユニバーサル公演」に学ぶ工夫
国の事業の中にも、障害のある子どもたちが主体的に参加できるよう工夫された公演があります。文化庁の「学校における文化芸術鑑賞・体験推進事業」の中の「ユニバーサル公演」です。宮城県の案内では、障がいのある子どもも主体的に参加できる工夫がある取り組みとして紹介されています。
実際の様子が分かる例として、広島県立福山特別支援学校の報道提供資料(令和7年9月)があります。東京演劇集団 風によるユニバーサル公演「ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち」の実施を知らせるもので、次のような工夫が書かれていました。
- 公演の前にワークショップを行い、劇の中で使う楽器や小道具にさわったり、指文字や手話の練習をしたりする。
- 公演中は、見たり聞いたりして感じとったものを、声に出したり体を動かしたりして自由に表現してよいことにする。
- 子どもたちと出演者が共演し、一緒にひとつの場面をつくる取り組みも行う。
私がすてきだと思うのは、「静かに見る」ことを前提にせず、感じたことを表に出すこと自体を鑑賞として大切にしている点です。イギリスなどの劇場で行われている、声や動きを気にせず楽しめる「リラックス・パフォーマンス」の考え方にも通じます。この考え方は芸術鑑賞会の鑑賞マナーの記事でも紹介しています。
五感で楽しめる演目の選び方
特別支援学校の芸術鑑賞会では、言葉や物語の理解だけに頼らず、音・振動・光・色・動きなど、いろいろな入り口から楽しめる演目を選ぶのがおすすめです。選ぶときに確認したいポイントをまとめてみます。
- 体で感じられる要素があるか:和太鼓の響きのように、耳だけでなく体に伝わる音は、言葉の理解に関係なく届きやすいものです。
- 目で追いやすい変化があるか:砂の絵が次々と姿を変えるサンドアートのように、見ているだけで変化が分かる表現は、集中のきっかけになります。
- 参加できる場面があるか:手拍子、体験コーナー、出演者とのやりとりなど、客席から関われる時間があると、子どもたちの表情が変わります。
- 上演時間や構成を調整できるか:途中で休憩を入れられるかも確認しておきたい点です。
- 大きな音や暗転の有無:苦手な子がいる場合は、事前に聞いておくと安心です。
たとえば和太鼓・囃子 千代園 剛は、日本国内・国外でも活躍する和太鼓と囃子の演目で、公演の内容や時間は学年や会場に合わせて相談できます。またサンドアートショー・講演会は、実演のほかに生徒体験やバイオリンの生演奏とのコラボがある構成です。
当日の環境づくりと、事前・事後の学習
子どもたちが安心して過ごせる環境づくりも大切です。学校側で考えておきたいことを挙げてみます。
- 座席の配置:車いすの子や、途中で出入りが必要な子が動きやすいように、通路や出入口の近くに余裕をもたせます。
- クールダウンの場所:音や人の多さに疲れたときに、少し離れて休める場所を用意しておくと、安心して最後まで参加しやすくなります。
- 見通しを伝える:チラシや写真を使って、「どんな人が来て、どんなことをするのか」「どのくらいの時間か」を前もって伝えておきます。
- 伝え方の工夫:法律にある「音声・文字・手話などによる説明」の考え方を参考に、絵カードや文字、手話など、その子に合った方法で内容を伝えるのもひとつの方法です。
事前学習では、出てくる楽器や道具の写真を見せたり、リズムをまねして手をたたいてみたりするだけでも、当日の「知ってる!」という喜びにつながります。事前学習の進め方は芸術鑑賞会の事前学習の進め方でくわしく紹介しています。
鑑賞のあとは、感想を文章で書くことにこだわらなくてもかまいません。いちばん心に残った場面を絵にする、聞こえたリズムをもう一度たたいてみる、写真を見ながら「どれが好きだった?」と指さしで選ぶ。そうした一つひとつが、その子なりの立派な「振り返り」です。
芸術鑑賞プロデュース会社「心」では、演劇・音楽・伝統芸能・パフォーマンス・講演会まで20を超える演目の中から、子どもたちの様子や会場、学習のねらいに合わせた演目をご提案しています。「体で感じられる演目がいい」「参加できる場面を入れたい」など、特別支援学校での芸術鑑賞会についても、お気軽にご相談ください。
- 文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律の施行について(通知)」
- 文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画(第2期)」
- 文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」(第1期)
- 宮城県「文化庁『学校における文化芸術鑑賞・体験推進事業』及び『舞台芸術等総合支援事業(学校巡回公演)』」
- 広島県立福山特別支援学校「報道提供資料 ユニバーサル公演『ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち』」(令和7年9月10日)
※法律や事業、取り組みの内容は、記事作成時点で公開されている情報をもとにしています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。







