
どうも、こんにちは!ロボットしずくです。稲川幸雄さんの演劇に参加したあと「劇団ロボットカンパニー」を立ち上げ、40人の仲間と舞台をつくってきた演劇人・パフォーマーです。今は芸術鑑賞プロデュース会社「心」で、学校の芸術鑑賞会をお手伝いしています。
今回のテーマは「サンドアートの芸術鑑賞会」です。サンドアートは、光の当たった台の上で砂を手で動かし、絵を描いては消し、また次の絵へと変えていくことで物語を見せる表現です。絵画のようでもあり、アニメーションのようでもあり、そして目の前で生まれる舞台でもあります。世界での広がりや、学校の学習とのつながりも参考にしながら、子どもたちとサンドアートを楽しむコツを考えてみます。
サンドアートとは?砂と光で「描いては消す」表現
サンドアート(砂絵)にはいろいろな形がありますが、芸術鑑賞会で見られるのは、主にライブで砂を動かして絵を変化させていくパフォーマンスです。下から光を当てた台やガラス板の上に砂をまき、指や手のひらで線を引いたり、砂を払ったりして絵を描きます。光をさえぎる砂の部分は影になり、砂をどけた部分は明るく抜ける。その明暗だけで、人の顔も、海も、街並みも現れてきます。
サンドアートのいちばんの特徴は、完成した絵がすぐに次の絵へと変わっていくことです。紙に描いた絵なら、描いたものはそのまま残ります。でも砂の絵は、ひと払いで形を変え、さっきまで笑っていた顔が、次の瞬間には空を飛ぶ鳥になっていたりします。私は、サンドアートは「消えることで物語が進む絵」だと思っています。
演劇の舞台転換は、照明を落としたり、セットを動かしたりして場面を変えます。サンドアートでは、その場面転換が、演者の手の中で、観客の目の前で起こる。舞台をつくる側の人間として、これほど潔くて、ぜいたくな場面転換はないと感じます。
世界に広がった砂のアート|カナダのアニメーションとウクライナの舞台
砂で絵を動かす表現は、映像の世界でも育ってきました。カナダの百科事典『The Canadian Encyclopedia』によると、アニメーション作家のキャロライン・リーフさんは、ハーバード大学でアニメーションを学んでいた1969年に、最初の作品『Sand or Peter and the Wolf』を制作しました。この作品をきっかけに1972年にカナダ国立映画制作庁(NFB)のアニメーションスタジオに加わり、1974年の『The Owl Who Married a Goose』はカナダ映画賞の短編部門で賞を受けています。同じ記事では、彼女がライトボックスの上の砂など、シンプルな手法を使ったことが紹介されています。
そして、ライブのパフォーマンスとしてのサンドアートが世界中で注目されたのが、2009年のウクライナです。アメリカの新聞『クリスチャン・サイエンス・モニター』は2009年9月30日の記事で、クセニヤ・シモノワさんがオーディション番組「Ukraine's Got Talent」で優勝したサンドアニメーションの演技を紹介しています。光る台の上で砂を動かして動く絵をつくり、音楽に合わせて、第二次世界大戦中とその後の自国のつらい歴史を描いたもので、多くの人の涙を誘ったと伝えています。
言葉の説明がなくても、砂の絵と音楽だけで歴史や人の気持ちが伝わる。これは、平和学習や道徳の時間に「感じて考える」きっかけとしても、サンドアートが力を持っていることを示していると私は思います。
図画工作の「砂」とつながる鑑賞
砂は、子どもたちにとってとても身近な材料です。文部科学省の『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編』では、低学年の造形遊びについて、身近な自然物や人工の材料の形や色などを基に造形的な活動を思い付くことが示され、材料の例として「土や砂,粘土や木切れ,紙,絵の具など」が挙げられています。また、活動が「砂場で穴を掘ったり」することから始まる例にも触れています。
つまり子どもたちは、砂場や図工の時間に、すでに砂を使って「形をつくる」体験をしているのです。そのいつもの砂が、プロの手にかかると、光の中で物語を語りはじめる。サンドアートの鑑賞会は、「自分の知っている材料で、こんなことができるんだ」という発見につながりやすい舞台です。
また、同じ解説では、鑑賞の内容として、自分たちの作品や身近な材料、我が国や諸外国の親しみのある美術などの形や色などを捉えることにも触れています。サンドアートを見たあとに「どこが面白かった?」「どうやって描いていたと思う?」と話し合うことは、図画工作の鑑賞の学びにもつながっていきます。
サンドアートの見どころ|手の動き・変化・音楽と言葉
サンドアートを初めて見る子どもたちに、どこに注目してほしいか。舞台をつくる側の目線から、私は次の3つをおすすめしています。
- 手の動き:指先で細い線を引く、手のひらで砂を広げる、指でつまんで落とす。手の使い方ひとつで、線の太さや明るさが変わります。
- 絵が変わる瞬間:サンドアートの見せ場は、ひとつの絵が次の絵に変わるところです。顔の輪郭が山の稜線になったり、波が髪の毛になったり。「次は何に変わるかな?」と予想しながら見ると、ぐっと夢中になれます。
- 音楽と言葉との重なり:サンドアートは、音楽や朗読と組み合わせることで、物語の力がいっそう強くなります。曲の盛り上がりと砂の動きが重なる瞬間は、ぜひ耳と目の両方で味わってください。
暗い会場で光を使って物語を見せるという点では、ブラックライトシアターとも通じるところがあります。光と暗闇の舞台の楽しみ方はブラックライトシアターの芸術鑑賞会の記事で紹介しているので、あわせて読んでみてください。
学年別の楽しみ方と、体育館での準備
同じサンドアートでも、学年によって楽しめるポイントは少しずつ違います。事前の声かけの目安として、私なりにまとめてみました。
- 小学校低学年:絵が次々に変わる驚きを、そのまま楽しみましょう。「何に見えた?」と声に出して言い合える雰囲気だと、もっと楽しくなります。
- 小学校中学年・高学年:図工で砂や土にふれた経験と結びつけて、「どうやってこの線を描いたのかな」と技の工夫に目を向けてみましょう。
- 中学生・高校生:砂の絵と音楽、言葉が合わさって、どのように物語やメッセージが伝わってくるのかに注目すると、鑑賞が一段深くなります。
体育館で行う場合は、演者の手元の砂絵を後ろの席の子どもたちまで届けられるよう、スクリーンの位置や会場の明るさ、暗幕の有無を事前に打ち合わせしておくと安心です。準備のポイントは体育館で芸術鑑賞会をするときの準備もあわせてご覧ください。
「心」の演目の中では、サンドアートショー・講演会が、「芸術を極めた砂の物語」をうたうサンドアートの舞台です。演目ページでは、実演に加えて、生徒の体験、先生の似顔絵、バイオリンの生演奏とのコラボ、講演会「夢とは」、朗読とサンドアートといった内容が紹介されています(作品は変えることもできます)。また、銀河鉄道の夜は、砂絵(サンドアート)がある演劇です。
芸術鑑賞プロデュース会社「心」では、サンドアートをはじめ、光と影の表現を生かした舞台を、学年や学習のねらいに合わせてご提案しています。「図工の学習とつなげたい」「言葉がなくても全校で楽しめる舞台を探している」など、お気軽にご相談ください。
- The Canadian Encyclopedia「Caroline Leaf」
- The Christian Science Monitor「Ukraine's Got Talent: Kseniya Simonova brings nation to tears」(2009年9月30日)
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編』(PDF)
※制度や取り組みの内容は、記事作成時点で公開されている情報をもとにしています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。




