
どうも、こんにちは!ロボットしずくです。稲川幸雄さんの演劇に参加したあと「劇団ロボットカンパニー」を立ち上げ、40人の仲間と舞台をつくってきた演劇人・パフォーマーです。今は芸術鑑賞プロデュース会社「心」で、学校の芸術鑑賞会をお手伝いしています。
11月20日は、国連が定めた「世界子どもの日」です。この日は、子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)が国連総会で採択された日でもあります。実はこの条約には、子どもが「芸術に参加する権利」がはっきり書かれているのをご存じでしょうか。今回は、舞台をつくる側の目線から、子どもの権利と学校の芸術鑑賞会のつながりを考えてみます。
11月20日は「世界子どもの日」|子どもの権利条約が採択された日
国連によると、「世界子どもの日」は、1954年12月14日の国連総会決議で、すべての国に「子どもの日」を設けるよう勧告されたことから始まり、毎年11月20日に祝われています。11月20日は、1959年に「児童の権利に関する宣言」が、そして1989年に「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」が国連総会で採択された日です。
外務省の説明では、この条約は1989年の第44回国連総会で採択され、1990年に発効し、日本は1994年に批准しました。条約では、18歳未満を「児童」としています。
ユニセフは、世界子どもの日を「子どものための、子どもによる、世界的な行動の日」と紹介しています。子どもたちがメディアや政治、スポーツやエンターテインメントの場で大人の役割を「テイクオーバー(乗っ取り)」する企画や、11月20日に世界の学校や有名な建物が青くライトアップされることも紹介されています。
第31条に書かれた「芸術に自由に参加する権利」
子どもの権利条約というと、命を守られる権利や、教育を受ける権利を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも、舞台に関わる私がいちばん心を動かされるのは、第31条です。外務省の日本語訳では、次のように書かれています。
- 第31条1:「締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に自由に参加する権利を認める。」
- 第31条2:「締約国は、児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進するものとし、文化的及び芸術的な活動並びにレクリエーション及び余暇の活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する。」
私はこの条文を読むたびに、芸術は「余裕のある子だけのぜいたく」ではなく、すべての子どもの権利なんだと背中を押される気持ちになります。遊ぶこと、休むこと、そして芸術にふれること。どれも、子どもが子どもらしく育つために欠かせないものとして、同じ条文の中に並んでいるのです。
学校の芸術鑑賞会は「平等な機会」の入口
第31条2には「適当かつ平等な機会の提供」という言葉があります。私はここに、学校の芸術鑑賞会の大切な役割があると考えています。
劇場やコンサートホールに足を運ぶかどうかは、家庭の事情や住んでいる地域、家族の興味によって大きく変わります。けれど、学校の体育館やホールで行う芸術鑑賞会なら、その学校の子どもたちが、同じ日に、同じ舞台を見ることができます。
障害のある子どもたちが芸術を楽しむための工夫も、「平等な機会」を考えるうえで欠かせません。演目選びや当日の環境づくりについては、特別支援学校の芸術鑑賞会の記事でくわしく紹介しています。
また、日本では2023年(令和5年)4月1日に「こども基本法」が施行されました。この法律は「日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり」と目的に掲げ、基本理念のひとつとして、すべてのこどもについて、年齢や発達の程度に応じて「意見を表明する機会・多様な社会的活動に参画する機会が確保されること」を示しています。芸術にふれる時間は、子どもたちが社会や文化とつながる、身近な「参画」の入口にもなると私は思います。
「意見を表明する権利」と、鑑賞後の子どもの声
子どもの権利条約の第12条1には、自分の意見を形成する能力のある子どもが、自分に影響を及ぼすすべてのことについて「自由に自己の意見を表明する権利」を確保することが書かれています。そして、その意見は年齢や成熟度に応じて相応に考慮される、とされています。
芸術鑑賞会のあとは、子どもたちが「自分はどう感じたか」を自由に言葉にできる絶好の機会です。舞台の感じ方には、正解がありません。同じ場面で笑う子もいれば、さびしくなる子もいます。「そう感じたんだね」と受け止めてもらえる経験は、自分の意見を言っていいんだ、という安心感につながります。
感想を引き出す問いかけや、感想を出演者に届ける工夫は、芸術鑑賞会の感想文の書かせ方で紹介しています。「良かった」だけでなく「よく分からなかった」「ここはこうだったらいいのに」という声も、子どもの大切な意見として受け止めてあげてください。
冒頭の動画の不思議の国のアリスとロボットは、登校拒否になった少女が「声」を取り戻すまでを描いた、笑って泣けるパフォーマンス演劇です。自分の気持ちを言葉にすることの難しさと大切さを、物語を通して感じられる演目だと思います。
学年別|子どもの権利とつなげる事前・事後のアイデア
世界子どもの日の前後に芸術鑑賞会がある学校では、子どもの権利の学習と組み合わせてみるのもひとつの方法です。学年に合わせた例をあげてみます。
- 小学校低学年:「みんなには、遊ぶことや、歌や劇を楽しむことも大切にされる権利があるんだよ」とやさしく伝えてから鑑賞。見たあとは、いちばん好きだった場面を絵にして、ひとこと添えます。
- 小学校高学年:第31条をやさしい言葉に言いかえて紹介し、「芸術にふれる機会がない子どもがいたら、どんなことができるだろう?」と考えます。鑑賞後は、自分が感じたことを理由とセットで発表し合います。
- 中学生:第12条の「意見を表明する権利」を知ったうえで鑑賞し、登場人物が「言えなかったこと」「言えたこと」に注目します。事後は、自分の思いを伝えることについて話し合う時間に。
- 高校生:こども基本法の基本理念にもふれながら、「文化や芸術に参加する」とはどういうことかを考えます。舞台の感想を、作品の評価だけでなく、自分の生き方や社会とのつながりの視点で書いてみるのもおすすめです。
テーマによっては、いじめや家族、心の悩みなど、子どもによっては自分の体験と重なる内容もあります。事前に担任の先生や養護の先生と内容を共有し、気になる子どもには声をかけられるようにしておくと安心です。
芸術鑑賞プロデュース会社「心」では、子どもたちが自分の気持ちや声に向き合える演劇や、家族・命・言葉をテーマにした舞台など、子どもの権利の学習ともつなげやすい演目をご提案しています。世界子どもの日や人権の学習に合わせた芸術鑑賞会も、学年や会場、子どもたちに持ち帰ってほしいことをお聞かせいただければ、一緒に考えます。どうぞお気軽にご相談ください。
- 外務省「児童の権利条約(児童の権利に関する条約)」
- 外務省「児童の権利に関する条約 全文」(第12条・第31条)
- United Nations「World Children's Day」
- UNICEF South Africa「World Children's Day」
- 内閣官房「こども基本法案の概要」
※制度や事業の内容は、記事作成時点で公開されている情報をもとにしています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。






